ビルやマンションと言った集合住宅の設備を管理する職種を総称して「設備管理」と呼びます。多数の住人のインフラを担う重要なお仕事ですが、「具体的にどんな業務をおこなっているのか分からない」という方も少なくないでしょう。
本記事では設備管理への転職を考えている方にも参考になるよう、設備管理の業務内容や混同されがちな「施設管理」との違い、向いている人、お仕事のやりがいを詳しく解説します。
目次
設備管理の業務内容とは?
設備管理の業務内容は以下の2つに大別されます。
- 電気やガス、水道といったインフラ設備の点検・管理
- エレベーターや消防設備などの専門設備の点検依頼
それぞれ詳しく見ていきましょう。
インフラ設備の点検・管理
設備管理の主な業務内容は電気やガス、水道といったインフラ設備の点検や管理です。問題なく住人の方々が暮らせるよう、各設備に異常がないか点検したり、発見した異常を修理したりするのが主な業務内容と言えます。
しかし、電気工事士の資格が必要な修理であったり、地中の水道管に異常が見られたりした場合は、有資格者や水道局の認可や委託を受けた専門家でなければ工事ができない場合があるため、大掛かりな工事を担当するというよりは日常的なトラブルの早期発見や解決を目的とするのが一般的です。
専門設備の点検依頼
先述したように、資格や認可がなければ工事や修理をおこなえない設備も少なくありません。これらの工事を専門家に依頼するのも設備管理の業務内容に含まれています。一任されている場合を除き、基本的には建物の所有者との打ち合わせを経て依頼先を決定し、実際に立ち合ったり今後の点検について指導を受けたりするのが一般的です。
設備管理と施設管理の違いは?
設備管理と混同されがちな職種に「施設管理」という職業があります。建物の管理という点では近い職種ですが、実際の立ち位置は大きく異なります。設備管理は建物のインフラ設備を担う技術職という意味合いが強い一方で、施設管理は清掃や入居者との交流やオーナーとの折衝といった業務から修繕見積りの提出など、幅広く施設全体を見通す業務がメイン。
施設管理は管理人というイメージが強く、実際に「ビルマネジメント」という職種で募集されていることも少なくありません。住人やオーナーとのコミュニケーションも多いため、設備管理よりも総合的な視野と働き方が求められると言えるでしょう。
設備管理に向いている人は?
設備管理は専門職としてのイメージが強く、なかなか業務内容も想像しにくいものです。実際には以下のような方に向いている職業と言えます。
- 技術職として働きたい方
- 縁の下の力持ちになれる方
- 設備系の資格を保有している方
それぞれ詳しく見ていきましょう。
技術職として働きたい方
設備管理はマンションやビルのあらゆる設備を管理するため、幅広く専門的な知識が求められます。その分、空調や上下水道、変電設備に至るまで、インフラ設備のほとんどを担うことで多様な経験が積める職種でもあるのです。
常駐するスタイルの設備管理であればトラブルが起きれば即時の対応を求められます。すぐに対応できるよう部品の名前はもちろん、メーカーごとの特長やシステムに至るまでを理解しなければなりません。見方を変えれば業務を通じてこれらの知識と経験が得られるため、機械やモノづくりに興味がある方、技術職に憧れがある方には適した職業と言えるでしょう。
縁の下の力持ちになれる方
ビルやマンションが問題なく稼働するにはインフラ設備が万全の状態であり続けなければなりません。定期的な点検はもちろん、不調があった際の早期発見など、目立たないながらも重要な役割を背負うのが設備管理です。派手な活躍ではありませんが、粛々と日々の業務を通じてやりがいを感じられる方には向いている仕事と言えます。
設備系の資格を保有している方
設備管理として勤務する上で取得しておくと有利に働く資格はたくさんありますが、代表的なものは以下の5つです。
- 第二種電気工事士
- 第三種冷凍機械責任者
- 危険物取扱者乙種4類
- 二級ボイラー技士
- 消防設備士乙種4類
この5つの資格は「ビルメン5点セット」と呼ばれ、所有していると資格手当が付与されたり、採用に有利に働いたりといったメリットがあります。これらの有資格者を選任する義務がある建物も多く、法的にも実務的にも重宝されるポジションと言えるでしょう。
設備管理の就職先は?
設備管理の仕事はやりがいを感じやすく、給与も安定していることがほとんど。しかし就職先によっては年収に100万円単位の開きが生まれることもあるため、設備管理として働く際はとくに慎重に就職先を選びましょう。設備管理として就職する場合、主に以下の2つのいずれかに属することになります。
独立系ビルメンテナンス会社
ビルメンテナンス会社の中でも、大手のグループ企業やゼネコン、銀行などの傘下に入っていない企業を「独立系ビルメンテナンス会社」と呼びます。ビル全体の管理だけでなく清掃単体や設備管理単体で業務を請け負っているケースも多く、結果として特定の分野に強みを持っていることも。設備管理に強い企業を選べば、自分のスキルアップにつながりやすいでしょう。
また一概には言えませんが、後述する系列系ビルメンテナンス会社に比べると母体の経営力や資金力の面で差が生まれやすく、給与や待遇、業務内容といった面では思い描いた通りの働き方ができない可能性もあります。転職や就職を考えている方は、信頼できるエージェントや転職サイトを活用して自分に適した企業を探すようにしましょう。
系列系ビルメンテナンス会社
先述した独立系とは異なり、不動産のデベロッパーやゼネコンといった企業を母体に持っている場合は系列系ビルメンテナンス会社と呼びます。他にも商社や銀行、保険会社などが母体になっているケースもあり、親会社にあたる大企業が保有しているマンションやビルといった建物の設備管理をおこなうのが一般的です。
他の形態のビルメンテナンス会社に比べて給与や待遇が安定していることが多く、営業をしてお仕事を獲得してくる必要がないため、競争に追われて疲弊する可能性は低いと言えます。また業務においても求められるクオリティが高く、設備管理の中でも忙しいため研鑽を積むには適しているでしょう。
手に職をつけて設備管理として働こう
幅広い専門知識と経験が求められる設備管理。ビルやマンションの設備を一手に担う職業だけに背負う責任は大きいですが、やりがいや成長した実感が得られるのは他の職業にはない魅力と言えます。本記事を参考に、設備管理への転職の一歩を踏み出してみましょう。