設備管理の仕事において、資格の取得は必須ではありません。未経験からでも働けます。

しかし、設備管理の現場では電気設備や空調設備、消防設備など、さまざまな設備を扱います。そのため、資格を持っていないと業務範囲が限られたり、昇進や転職で不利になったりする可能性があります。

この記事では、設備管理の仕事に役立つ資格をはじめ、必要性やメリット、難易度を詳しく解説します。

設備管理の資格取得に興味がある方は、ぜひ最後までお読みください。

設備管理とは

設備管理とは、建築物における設備の運転や保守、点検を担う仕事です。

オフィスビルや商業施設、工場などの建物には、電気設備や空調設備、消防設備など多くの設備が備わっています。これらを適切に管理し、利用者が快適に過ごせる環境を整えるのが設備管理の役割です。

管理する設備は、建物の規模や用途によって異なります。しかし、基本的な業務内容は以下の3点です。

  • 設備の運転状況の確認
  • 定期点検
  • 不具合が発生した時の対応

設備管理の仕事は、建物全体のマネジメントである施設管理の一部として位置づけられます。

施設管理には設備管理のほか、清掃や警備、テナント対応なども含まれます。設備管理はその中でも専門性の高い分野です。

業務には適切な知識と技術が求められます。

設備管理における資格の必要性

設備管理の現場では、資格者の配置が法律によって義務付けられている設備もあります。

たとえば、一定規模以上の受変電設備には、電気主任技術者の選任が必要です。エネルギー使用量が多い工場では、エネルギー管理士の選任が欠かせません。

このように設備管理では、資格保有者が重要な役割を担います。

資格はすべての設備管理に必要ではありません。多くの企業では、未経験者や資格を持っていない人も採用しています。

しかし、資格を保有していれば、業務の幅が広がり、責任のある立場に就きやすくなるのです。

設備管理の資格を取得するメリット

設備管理の資格を取得するメリットは、3つあります。

  • 業務の幅が広がる
  • キャリアアップができる
  • 年収アップを期待できる

将来性を重視するなら、資格取得はあなたの人生にとって価値があります。それぞれのメリットを把握し、仕事の可能性を広げましょう。

業務の幅が広がる

設備管理の資格を持つと、担当できる業務の範囲が広がります。

第二種電気工事士の資格があれば、電気設備の点検や簡単な工事を自分で行えます。冷凍機械責任者の資格があれば、空調設備の保守点検も任されるようになるでしょう。

このように、資格を持つと1人で複数の設備を管理できるようになるほか、職場での存在価値が高まります。資格に応じた専門知識を身につけることで、トラブル発生時の対応力も向上するはずです。

キャリアアップができる

設備管理の資格は、キャリアアップをする上で欠かせません。

たとえば、建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)の資格は、設備管理の責任者に必要です。大規模な建物では、資格保有者を専任で配置しなければならないルールがあります(法律で定められている)。

電気工事士とエネルギー管理士の資格を持っていれば、省エネルギー対策の専門家としての道を開けるでしょう。

資格はキャリアの選択肢を広げる武器です。

さまざまな資格を組み合わせれば、幅広い分野での活躍も期待できます。

年収アップを期待できる

設備管理の資格を取得すると、給与面でのメリットがあります。

多くの企業では、資格保有者に対して手当を支給しているのが一般的です。資格の種類や数に応じて手当が加算されるため、年収アップにつながります。

また、資格を活かして転職すれば、高い年収を目指せるでしょう。

特に、エネルギー管理士や電気主任技術者など、高度な資格を持つ人材は市場価値が高いです。好条件で転職できるチャンスが広がります。

さらに、資格を持てば、プロジェクトリーダーや管理職として活躍する機会も増えるでしょう。

設備管理におすすめの資格は立場で変わる

設備管理におすすめの資格は、仕事上の立場によって変わります。

  • 早期取得をおすすめしたい資格
  • 中級になったら取得をおすすめしたい資格
  • 責任者におすすめする資格

現状に最適な資格を取得し、仕事の幅を広げていきましょう。

早期取得をおすすめしたい資格

設備管理の仕事を始めたら、3つの資格取得を目指しましょう。

  • 第二種電気工事士
  • 消防設備士(乙種)
  • 危険物取扱者(乙種)

これらの資格は、設備管理の基礎知識を身につけられます。

第二種電気工事士は、なかでも重要な資格です。電気設備の点検や簡単な工事ができるようになるほか、業務の幅が大きく広がります。

中級になったら取得をおすすめしたい資格

設備管理の実務経験を積んだら、第一種電気工事士や冷凍機械責任者(第二種)の取得に挑戦しましょう。

基礎資格より難易度は高くなりますが、業務の幅をさらに広げられます。

第一種電気工事は、広範囲の電気工事ができるようになるのが魅力です。取得には3年以上の実務経験が必要ですが、試験自体は経験がなくても受験できます。

冷凍機械責任者は、空調設備の管理に必要な資格です。設備管理の中で専門性の高い業務を担当したい方に適しています。

責任者におすすめする資格

設備管理の責任者を目指す場合は、建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)やエネルギー管理士の取得がおすすめです。

大規模な施設での設備管理全般を監督する立場になると、資格取得が必須になります。

建築物環境衛生管理技術者は、大規模建築物で欠かせない資格です。取得すれば、責任者としての道が開けます。

エネルギー管理士は、省エネルギー対策の専門家として活躍できる将来性のある資格です。エネルギー使用量の多い工場では、資格保有者の選任が義務付けられているため、必要性は高いといえるでしょう。

設備管理におすすめの資格一覧

設備管理におすすめの資格は、5つあります。

  • 第二種電気工事士
  • エネルギー管理士
  • 建築物環境衛生管理技術者
  • 消防設備士(乙種)
  • 第三種冷凍機械責任者

資格によって、難易度や取得に必要な時間は異なります。自分のキャリアプランに合わせて、最適な資格の取得を目指しましょう。

第二種電気工事士

第二種電気工事士は、設備管理の仕事で需要が高い資格です。600V以下の電気設備の工事や点検ができるようになるため、 設備管理業務で幅広く活用できます。

筆記試験は、合格率が60〜70%と高水準です。数年分の過去問題を解いて理解を深めれば、合格圏内に達します。技能試験は練習が必要ですが、十分な準備期間を確保すれば合格は難しくありません。

また、第二種電気工事士は受験資格に制限がないため、未経験者でも挑戦できます。電気の基礎知識から実践的な技術まで学べるため、設備管理の入門資格としておすすめです。

エネルギー管理士

エネルギー管理士は、工場や大規模施設のエネルギー使用量を監視・改善する資格です。原油換算で年間3,000Kl以上のエネルギーを使用する第一種エネルギー管理指定工場では、資格保有者の選任が法律で義務付けられています。

試験は、エネルギー総合管理及び法規が共通科目となり、熱管理士科目と電気管理士科目のいずれかを選択します。合格率は36.7%で、取得には100時間程度の学習時間が必要です。

自動車工場や電子機器工場、食品工場など、エネルギー使用量の多い施設での需要が高く、工場勤務の就職や転職で強みになります。

建築物環境衛生管理技術者

建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)は、大規模な建築物の環境衛生管理を担う資格です。空気環境や水質、廃棄物の管理など、建物全体の衛生管理を監督する立場に必要とされます。

資格取得には2年の実務経験が必要で、試験は年1回の実施のみです。出題範囲は広く、合格率は10%台と難易度は高いといえます。

ただし、一定規模以上の建物では必置資格のため、取得すれば責任者としての道が開けます。現場での実務経験を積みながら、計画的に取得を目指すのがおすすめです。

消防設備士(乙種)

消防設備士(乙種)は、建物の安全管理に欠かせない消防設備の点検や、整備を行う資格です。

実務経験がなくても受験可能で、合格率は40%前後と取り組みやすい水準にあります。

消防設備の定期点検は法律で義務付けられているため、設備管理の現場で重宝される資格です。乙種の場合は、消防設備の点検・整備のみを担当できます。

設備管理の仕事を始めた早い段階で取得ができれば、甲種資格への足掛かりとしても活用できるでしょう。

第三種冷凍機械責任者

第三種冷凍機械責任者は、1日の冷凍能力が100t未満の製造施設での冷凍設備の保安を担当できる資格です。空調設備の保守点検や監督業務に必要とされます。

合格率は40%程度で、適切な対策を行えば十分に合格圏内です。

冷凍設備は多くの建物に導入されているため、需要の高い資格といえます。第二種や第一種への足がかりとしても有効です。

設備管理の資格を取得する難易度

設備管理に関連する資格の難易度をまとめました。

それぞれの合格率や学習時間を考慮して、計画的な準備を進めましょう。

資格名難易度
第二種電気工事士合格率60~70%
筆記試験は独学で対応可能
技能試験は練習が必要
危険物取扱者(乙種4類)合格率が高い
数日の学習で取得可能
全国で年に数回実施
エネルギー管理士合格率36.7%
約100時間の学習時間が必要
実務経験は不要
建築物環境衛生管理技術者合格率10%台
2年の実務経験が必要
試験の実施は年1回のみ
消防設備士(乙種)合格率40%前後
実務経験は不要
独学での取得が可能
第三種冷凍機械責任者合格率40%程度
実務経験は不要
計画的な学習が必要
ビル管理士合格率10%台
実務経験必須
試験の実施は年1回のみ

まとめ

設備管理の仕事では、資格が役立つシーンが数多くあります。まずは基礎的な資格の取得から始め、経験を積みながら高度な資格を目指しましょう。

そうすれば、段階的なキャリアアップを実現できます。

資格取得はけっして簡単ではありませんが、キャリアの幅を確実に広げてくれます。自分のペースで取得を進め、設備管理のプロフェッショナルを目指してください。