設備管理(ビルメン)は、サービス職業従事者に分類される職種です。建物や設備の運営・管理を行い、安全で快適な環境の維持を担っています。

しかし、ビルメンの仕事に興味を持つ人は、こんな悩みを抱えていないでしょうか。

「設備管理にはどんな資格が必要?」
「キャリアプランはどうしたらいい?」
「本当にやりがいのある仕事なの?」

この記事では、ビル設備管理の職種分類から具体的な仕事内容、必要な資格、年収、施設管理との違い、仕事のメリット・デメリットを詳しく解説します。

ビル設備管理の仕事に関心のある人はぜひ最後までお読みください。

設備管理(ビルメン)の職種と分類

設備管理(ビルメン)は、日本標準職業分類においてサービス職業に分類されます。

ビルの管理人は、主に事務用や事業用のビルでの管理業務を担当します。

設備管理は、建物の維持管理やサービス提供に関連する職種です。安全で快適な環境を保つために欠かせません。また、建物の規模や用途によって業務内容が異なるため、幅広い知識と経験が求められます。

ここでは、以下の設備管理の職種と分類を詳しく解説します。

  • ビル
  • 工場
  • 水処理場
  • 物流施設
  • データセンター

設備管理の業務を具体的にイメージしたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

ビルの設備管理

ビルの設備管理は、日本標準職業分類は以下のとおりです。

大分類Eサービス職業従事者
中分類41居住施設・ビル等管理人
小分類413ビル管理人

管理する主な設備は、多岐にわたります。

  • 電気設備
  • 空調設備
  • 給排水設備
  • 消防設備
  • エレベーター

主な業務は日常的な点検や定期的なメンテナンス、設備の稼働維持です。また、設備に不具合が発生した際には、原因究明と適切な対応措置を講じます。

設備はビルの用途や規模によって異なりますが、入居者や利用者の安全と快適さを確保するために、24時間365日の管理体制が必要です。

設備管理のスタッフは、作業着を着用して実務にあたります。

工場の設備管理

工場の設備管理は、日本標準産業分類は以下のとおりです。

大分類Rサービス業
中分類90機械等修理業
小分類901機械修理業(電気機械器具を除く)

生産設備では機械の保守点検・修理・運転管理などを担当し、工場では電気設備・空調設備・給排水設備の管理を行います。

生産ラインの停止は企業に大きな損失をもたらすため、予防保全の観点から定期的な点検と適切なメンテナンスが必要です。

管理する設備は工場の規模や業種によって異なりますが、安全性と生産性の両立を図るために、専門知識と技術が求められます。特に、電気機械器具の修理業務は別分類となるため、専門性の高い技術者の配置が必須です。

水処理場の設備管理

水処理場の設備管理は、日本標準産業分類は以下のとおりです。

大分類Eサービス職業従事者
中分類89施設機械設備操作・建設機械運転の職業
小分類089-01ビル設備管理員

業種分類では、F電気・ガス・熱供給・水道業の36水道業に該当します。

業務内容は、主に浄水場や下水処理場でのさまざまな設備の管理です。水の安全性と公衆衛生の維持に貢献します。

具体的には、4つの設備における運転管理と保守点検を行います。

  • ポンプ設備
  • 配管設備
  • 浄化設備
  • 電気設備

施設は24時間稼働するケースが多く、緊急時の対応も求められます。

水道法や下水道法などの法令に基づく管理基準を遵守しながら、効率的な運営と環境保護に取り組むため、高い専門性と責任感が必要です。

物流施設の設備管理

物流施設の設備管理は、日本標準産業分類は以下のとおりです。

大分類Rサービス業
中分類92 その他の事業サービス業
小分類922 建物サービス業

業務内容は、倉庫内の空調システム管理・照明設備の保守・荷役機器のメンテナンス・セキュリティシステムの管理などです。温度管理が必要な冷蔵・冷凍倉庫では、24時間体制での監視と調整が必要になります。

実際の現場では、自動倉庫システムや搬送コンベアなどの最新物流機器の保守点検、防火設備の点検、非常用電源の管理など、多岐にわたる業務を担当するのが一般的です。IoTやAIを活用した新しい物流技術との関わりも増えています。

物流を止めないという使命のもと、予防保全・迅速な故障対応・エネルギー効率の向上にも取り組む、物流インフラの維持に貢献できるやりがいのある職種です。

データセンターの設備管理

データセンターの設備管理は、日本標準産業分類は以下のとおりです。

大分類G 情報通信業
中分類39 情報サービス業
小分類391 情報処理サービス業

業務内容は、サーバールームの精密な温湿度管理・電源設備の保守・ネットワーク機器のメンテナンス・高度なセキュリティシステムの管理などです。安定した電力供給を24時間365日維持します。

具体的には、UPS(無停電電源装置)や非常用発電機の定期点検・サーバーラックの冷却効率を最適化するためのエアフロー管理・入退室管理システムや監視カメラの保守などです。

最新のIT技術と設備管理の専門知識を活かし、デジタルインフラの安定運用に貢献する、技術者として誇りを持てる職種です。

設備管理(ビルメン)の仕事内容

設備管理(ビルメン)の仕事内容は、主に5つに分けられます。

  • 設備管理
  • 保守・点検業務
  • セキュリティ管理
  • 修理・トラブル対応
  • 清掃業務

上記に加えて、エネルギー管理や各種報告書の作成などの仕事もあります。

ここでは、設備管理(ビルメン)の仕事内容をそれぞれ解説します。

設備管理

設備管理の中心となる業務は、電気・空調・給排水・消防などの各種設備の運転管理です。

設備仕事内容
電気設備照明やコンセント、受変電設備の管理を行い、電力の安定供給を確保する
空調設備室内環境の快適性を維持するため、温度や湿度の管理を実施
給排水設備安全な水の供給と適切な排水処理を担当する
消防設備火災報知器やスプリンクラーなどの点検を定期的に行い、非常時に確実に作動するよう維持管理

エレベーターなどの昇降機設備も、管理対象として欠かせません。専門業者と連携しながら、安全運行を確保します。

保守・点検業務

保守・点検業務は、設備の不具合を未然に防ぎ、安定した運用を実現するための業務です。

日常点検では設備の稼働状況や異常の有無を確認し、必要に応じて調整や清掃を実施します。定期点検では、法令で定められた項目に基づいて実施し、点検結果を正確に記録して保管します。

特に、電気設備や消防設備は法定点検が義務付けられており、専門の資格を持つ技術者が実施しなければなりません。

また、設備の劣化状況を把握し、計画的な修繕や更新の提案も担当します。

セキュリティ管理

セキュリティ管理では、建物内の安全確保と防犯対策を担当します。

主な仕事内容は以下のとおりです。

  • 防犯カメラの運用
  • 監視システムの管理
  • 入退室管理システムの運用

24時間体制での監視が必要な施設では、警備員と連携して業務にあたります。不審者や不審物の早期発見と適切な対応も必要です。

また、防犯設備の定期点検や更新計画の立案も実施しなければなりません。常に最適な防犯体制の維持が条件です。

さらに、災害時の対応マニュアルの整備や避難訓練の実施なども、セキュリティ管理には欠かせません。

修理・トラブル対応

設備の故障やトラブルが発生した際は、迅速な対応が必要です。電気系統の不具合、空調機器の故障、水漏れなど、日常的に発生するさまざまなトラブルに対して、原因究明と応急処置を行います。

専門的な修理が必要な場合は、協力会社との連絡調整や工事の立会いも担当します。

また、トラブルの発生状況や対応内容を記録し、再発防止策の検討も行わなければなりません。緊急時には入居者への適切な情報提供や、被害を最小限に抑えるための措置を講じる判断力も求められます。

清掃業務

設備管理における清掃業務は、機器の性能維持と美観保持の両面で重要です。

主な仕事内容は3つあります。

  • 空調機のフィルター清掃
  • 給排水設備の清掃
  • 電気設備周りの埃除去

各設備の特性に応じて、適切な清掃を実施するのが目的です。

また、機械室や電気室などの管理区域の整理整頓も欠かせない業務です。定期的な清掃で設備の劣化を防ぎ、長寿命化を図ります。

特に、衛生管理が必要な施設では、法令基準に基づいた清掃作業の実施と記録の保管が必要です。

その他

その他の業務では、エネルギー管理や各種報告書の作成があります。

電気やガス、水道の使用量を記録し、効率的な運用計画を立案します。

また、設備の運転データや点検結果をまとめた報告書を作成し、管理記録として保管します。入居者からの要望や苦情への対応、設備更新時の提案資料作成なども欠かせない業務です。

建物の特性や用途に応じて、省エネルギー対策の立案や環境負荷低減の取り組みも求められます。近年では業務の多様化に伴い、パソコンを使用したデータ管理やレポート作成のスキルも必要になるケースが多いです。

設備管理(ビルメン)の年収

設備管理(ビルメン)の年収は、資格の有無や経験年数、勤務地域によって大きく異なります。

平均年収は約290万円で、月収にすると20万円程度です。

月収の分布を見ると、15万〜20万円未満が37%、20万〜25万円未満が48%を占めています。関東圏では給与水準が若干高くなる傾向がありますが、全体の88%が月収25万円未満です。

待遇は企業規模や勤務形態、担当する建物の規模によっても変化します。ただし、資格取得による手当や夜勤手当などで収入アップは可能です。

ここでは、資格がない場合・ある場合・年齢別の平均年収を詳しく解説します。

資格がない場合

資格を持っていない場合や業務未経験者の設備管理者の平均年収は、約250万円です。業界の初任給水準を反映しているといえるでしょう。

ただし、多くの企業では入社後の資格取得を支援する制度を設けており、資格手当の支給や資格取得支援制度を用意しています。未経験者でも、資格取得に向けた学習時間を確保できる点は大きなメリットです。

また、夜勤や休日出勤の手当が別途支給される場合もあり、実際の収入は基本給よりも増える可能性があります。

資格がある場合

設備管理(ビルメン)に関連する資格保有者の平均年収は、270万〜300万円の範囲です。

特に、ビルメン4点セットと呼ばれる以下の資格を取得すると、ひとつの資格につき数千円〜10,000円の手当が付きます。

  • 第二種電気工事士
  • ボイラー技士2級
  • 第三種冷凍機械責任者
  • 危険物取扱者乙種4類

また、建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)の資格を持つと、大規模な施設の責任者として選任される可能性が高く、より高い待遇を得られやすいです。

資格手当が基本給に上乗せされると、無資格者と比較して年収が20〜50万円ほど上昇します。

年齢別の平均年収

設備管理(ビルメン)の年齢別の平均年収は、20代後半から30代前半で年収300~350万円前後、40代で350~400万円ほど、50代以上で400~450万円前後です。他の業種と比較すると、緩やかな傾向にあります。

ただし、これらのデータは資格保有者を対象にしたものです。無資格の場合は年齢が上がっても、給与の上昇幅は限定される可能性があります。

管理職になれば年収は大きく上昇し、450万円以上となるケースもあります。しかし、キャリアアップを実現するには、経験と資格の取得が必要です。

施設管理と設備管理の違い

施設管理と設備管理は、建物の維持管理でそれぞれ異なる役割を担います。

施設管理はビルのオーナーが本来行う管理業務を代行する立場であり、建物運営全般を統括します。設備管理は建物に設置された設備の保守・点検に特化した業務を行うのが一般的です。

また、施設管理は館内利用規則の策定やテナント誘致なども担当し、より上流工程の業務を担当します。

両者の違いは服装にも表れ、施設管理はスーツ着用が基本で、設備管理は作業着での業務が中心です。さらに、必要な資格もそれぞれ異なります。

施設管理の資格

施設管理者に求められる資格は、主にマネジメントや経営に関連するものが中心です。

資格特徴
認定ファシリティマネジャー施設管理の代表的な資格で、経営的視点から施設の効率的な運用を担う
ビル経営管理士建物の経営管理や人材育成に関する専門知識を証明する資格
宅地建物取引士不動産取引では必須なものの、施設管理業務では必要というわけではない

こうして見ると、宅地建物取引士の重要性は低く感じてしまいます。しかし、テナントの誘致や賃貸借契約を担当するプロパティマネジメント業務では、重要な資格です。

設備管理の資格

設備管理(ビルメン)では、技術系の資格が重視されます。

以下の3つはビルメン三種の神器と呼ばれ、管理監督者としては重要な資格です。

  • 建築物環境衛生管理技術者
  • 第三種電気主任技術者
  • エネルギー管理士

これらの資格は取得の難易度が高い反面、選任が義務付けられる建物も多く、有資格者の価値は高くなります。

また、以下のビルメン4点セットも、設備管理の実務ではプラスに働く資格です。

  • 第二種電気工事士
  • 第三種冷凍機械責任者
  • 危険物取扱者
  • 乙種4類二級ボイラー技士

これらの資格の合格率は、それぞれ50%ほどと取得しやすいです。

設備管理(ビルメン)のやりがい

ビル設備管理の仕事には、確かな誇りとやりがいがあります。

  • 柔軟な働き方ができる
  • 社会インフラを支える誇り
  • 技術を活かすことで成長を実感できる

設備管理(ビルメン)のやりがいを理解すれば、あなたがこの職種に向いているかどうかを判断できます。

ここでは、3つのやりがいを詳しく解説します。

社会インフラを支える誇り

設備管理(ビルメン)の仕事は、社会に欠かせないインフラを支えるやりがいのある職業です。私たちの生活や企業活動は、建物や施設の安定した運営があってこそ成り立ちます。

病院では患者の命を守るため、データセンターでは重要な情報を守るため、工場では生産活動を止めないために、24時間365日の安定稼働が実現されているのです。

真夏の災害時でも、非常用電源の確保や空調システムの維持により、避難施設の安全な環境が維持されています。また、物流倉庫では温度管理を徹底し、食品や医薬品の品質を保持し、人々の健康と安全に貢献しています。

このように、設備管理は目立たない縁の下の力持ちです。しかし、社会インフラの安定稼働を通じて、人々の暮らしや企業活動を確実に支えている、大きな誇りを感じられる仕事なのです。

技術を活かすことで成長を実感できる

設備管理(ビルメン)は、技術力の向上とキャリアの成長を実感できる専門職です。電気・空調・給排水・消防など、多岐にわたる技術分野の知識が必要になります。

そのため、資格取得を通じた学習機会が豊富に用意されており、企業による支援制度も充実しているのが魅力です。

例えば、第二種電気工事士の資格を取得すれば電気設備の保守点検を、ボイラー技士の資格では熱源設備の運転管理を任されるようになります。さらに、IoTやAIなど最新技術の導入により、デジタルスキルを磨く機会もあるでしょう。

こうした専門性の向上は、資格手当という形で収入にも反映され、技術者としての成長と価値を具体的に実感できます。専門知識を深めれば深めるほど、より重要な施設の管理を任されるようになり、キャリアの広がりを実感できる職種なのです。

柔軟な働き方ができる

設備管理(ビルメン)は、個人の生活スタイルに合わせた柔軟な働き方ができる職種です。シフト制による勤務体系では、平日休暇の取得もできます。

一般的なサラリーマンとは異なる時間の使い方ができるため、自己啓発や資格取得の学習、家族との時間など、自分らしい生活設計を立てられます。

平日の病院受診や銀行での手続き、混雑を避けた買い物など、効率的な用事の処理が可能です。また、夜勤の場合は日中の時間を活用して資格の学習に充てたり、子育て世代であれば学校行事への参加も調整しやすくなります。

このように設備管理は、24時間稼働の施設を支えながらも、個人の生活との両立が図れる仕事です。長期的なキャリア形成を可能にするため、年齢を重ねても活躍できる点が大きな魅力といえるでしょう。

まとめ

設備管理(ビルメン)は、建物の安全と快適さを支える重要な職種です。日本標準職業分類では、サービス職業に分類されています。

業務内容は設備の保守点検から緊急時対応まで幅広く、24時間体制での勤務や資格取得の必要性など、一定の負担は伴います。給与水準は決して高くありませんが、資格取得による着実な収入アップが可能です。

以下の5点に注目すると、転職の成功率を上げられるでしょう。

  • 資格取得は収入とキャリアアップに直結する
  • 技術的な業務に集中できる職種
  • 売上ノルマなどの数字的なプレッシャーが少ない
  • 資格取得は企業がサポートしてくれる
  • 平日の休暇取得が可能

設備管理(ビルメン)は人手不足が深刻な業界のため、定年後も働き続けられる可能性が高いです。着実なスキルアップと安定した雇用を求める方には、おすすめの職種といえるでしょう。