設備管理(ビルメン)の仕事は直接的に売上を上げる部門ではなく、「キャリアアップできないのでは?」「長く続けていても年収が上がらないのでは?」と感じるかもしれません。しかし設備管理(ビルメン)としてキャリアアップした人は多く、工夫や努力次第で年収を上げることは十分に可能です。

今回は、設備管理(ビルメン)の仕事で成功するポイントを解説します。キャリアアップの方法にも触れるので、今後設備管理(ビルメン)として年収を上げていきたい人はご参考ください。

設備管理(ビルメン)とは

設備管理(ビルメン)とは、施設における設備や機械の運用・保守・管理を行う業務および担当者を指す言葉です。設備や機械の定期的な点検・メンテナンスが主な仕事であり、トラブルを未然に防ぐ「予防保全」の考え方が重視されます。

設備管理(ビルメン)は施設の運用に欠かせない仕事ではありますが、営業職やマーケティング職のように「売上や契約率に応じてどんどんインセンティブ給がつく仕事」ではありません。爆発的な年収増は見込みにくいですが、その分コツコツと年収を上げることが可能です。特に、長年の経験と専門知識に裏付けされる点検技術や、複数の施設を包括的に管理できる管理責任者(所長・統括マネージャーを含む)に昇進するスキルが、年収アップに欠かせない要素となります。

設備管理(ビルメン)の平均年収

設備管理(ビルメン)の平均年収は約290万円で、月収20万円前後がひとつの目安となります。

とはいえ、資格保有者の40代以上では平均年収が450万円に上がるため、知識や経験が重要視されると言えます。

その他、管理職になると年収が450万円以上になることも多く、複数のメンバーを抱えてリーダーシップを発揮する存在として、組織内で重宝されていくでしょう。

設備管理(ビルメン)の担当者に求められる能力

ここでは、設備管理(ビルメン)に求められる能力を紹介します。以下の能力がある人は施設管理の仕事に転職しやすいだけでなく、入社後も高く評価してもらえる可能性が高まります。

マニュアル通りミスなく仕事をする能力

施設の定期点検や設備の調整・修理作業の場合、マニュアルに従って正確に作業をおこなう必要があります。些細なミスや「大きなトラブルにはならないだろう」という油断が事故につながることもあるため、細部の注意を払い、確実に仕事を遂行していきましょう。無理に自己判断せずマニュアルに沿って正しく業務をする能力や、ミスなく確実に仕事ができる能力を持っている人は、設備管理(ビルメン)として重宝されます。

時間通りに仕事を終わらせるスピード感

設備管理(ビルメン)では、時に複数のビルを1日で点検したり、広大な敷地にある設備全体を見回ったりすることも出てきます。そのため、時間通りに仕事を終わらせるスピード感も欠かせません。

どんなにミスなく丁寧に作業していても、明らかにタイムスケジュールから逸脱することが続いてしまうと、計画通りの点検ができません。結果、「点検遅れ」「トラブルに気づかない」「修理が遅れる」など、トラブルも続いてしまいます。

作業の優先順位を正しく設定し、時間管理能力を高めるなど工夫しながら効率的に業務を進めていきましょう。

トラブル対応力

トラブルが発生した場合、迅速かつ適切に対応することでダウンタイムを最小限に抑え、業務の効率や安全性を維持するのも設備管理(ビルメン)の仕事です。トラブルが起こるとつい慌ててパニックになってしまいがちですが、だからこそ冷静にひとつずつ対処する能力が求められます。

また、問題の兆候を見逃さないこと、優先順位を判断しながら正確な報告・連絡・相談ができることも大切です。

専門的な設備知識

設備管理(ビルメン)では、機械の構造・動作原理・メンテナンス方法に関する知識が必要です。基本的には入社してからコツコツ覚えながら習得できますが、なるべく早い段階で知識を身につけ、戦力となることが期待されるでしょう。

また、機械の不具合や故障が発生した場合のトラブルシューティングや、安全規定などルール面を記憶しておくことも大切です。

最低限のOAスキル

近年はツールやソフトウェアを使って業務状況を可視化・共有する企業も増えているため、最低限のOAスキルが必要です。Word・Excel・PowerPointなど基本的なビジネスソフトを使えることや、最低限のITリテラシーがあってデータセキュリティや情報漏洩対策に関する意識を持っていることも重視されます。

「パソコンは一切使えない」という場合、あらかじめ勉強してから設備管理(ビルメン)を目指すなど、工夫した方がよいでしょう。

設備管理(ビルメン)の担当者が年収を上げる方法

ここでは、設備管理(ビルメン)が年収を上げる方法を解説します。具体的なキャリアパスにも触れるので、ご参考ください。

継続年数を積み上げる

設備管理(ビルメン)は長年コツコツと続けやすい職種であり、勤続年数が長くなればなるほどルーティン業務や機材の特徴に詳しくなれるのが魅力です。突発的なトラブルに対応した経験も増えるので、経験不足で右往左往してしまうことも少なくなるでしょう。

10年単位での努力が必要ですが、継続年数を積み上げて少しずつ年収を上げていくのもひとつの方法です。やがて知識や経験が十分であると判断されれば、昇進・昇給のチャンスも増えていきます。

資格を取得する

資格を取得すると専門的な知識やスキルを証明できるようになり、「確実にスキルを持っている」として評価してもらえます。昇進・昇給のチャンスが増えるだけでなく、転職時にも有利になることが多いので、取得しておいて損はありません。

設備管理(ビルメン)の仕事で役立つ代表的な資格として、以下が挙げられます。

  • 建築物環境衛生管理技術者
  • 第三種電気主任技術者
  • エネルギー管理士
  • 第二種電気工事士
  • 第三種冷凍機械責任者
  • 危険物取扱者乙種4類
  • 二級ボイラー技士
  • 消防設備士乙種4類

資格取得補助として研修参加費や参考書購入費を援助してくれる会社もあれば、完全に自己負担となる会社まで、支援はさまざまです。本気でキャリアアップを狙うのであれば、資格も積極的に取得してみましょう。

所長・統括マネージャーとして昇進・昇格を目指す

所長・統括マネージャーとして昇進・昇格を目指すのも、設備管理(ビルメン)が年収を上げる代表的な方法です。リーダー・副所長・所長・統括マネージャーなど、管理職として人を束ねて動かす側の立場に昇進することで責任範囲が広がり、その分年収も高くなります。

しかし、昇進・昇格を目指すには、単に業務をこなすだけでなく、戦略的にスキルや経験を積んで組織内で評価されていく必要があります。設備管理(ビルメン)で管理職になるには、以下のようなスキルセットが欠かせないのでチェックしておきましょう。

  • 技術的な専門性・知識
  • リーダーシップ
  • マネジメントスキル
  • コミュニケーション能力
  • 業績・成果
  • 業務改善の提案力

設備管理(ビルメン)として最低限必要な知識が身についていることはもちろん、複数のメンバー(部下)を束ねる統率力も必要です。

例えば強力なリーダーシップのある人が所長や統括マネージャーになれば、メンバーのモチベーションを引き上げながら効率よく仕事を回せます。モチベーションが下がり気味な人を個別にサポートしたり、個人の事情に合わせて無理なく業務量を調整したりできれば、部下からの信頼も熱くなるでしょう。同様に、更に上のポジションと現場の担当者との橋渡し的な存在になれるコミュニケーション能力があれば、貴重な人材として重宝されます。

また、場合によっては業務改善提案を試みて、効率化や生産性向上に向けて動ける人材が評価されることもあります。

例えばルーティンワークの順番ややり方を見直して必要な工数・人員数・時間数を削減できれば、メンテナンスの効率は大幅に上がります。企業のコストカットにもつながるので、業績アップのきっかけとなり、高く評価されることも多いです。実績を積んでいけば昇進・昇給もしやすくなるので、現場からの声を積極的に吸い上げる企業であれば、提案力を磨いてみるのもおすすめです。

より好条件の会社に転職する

設備管理(ビルメン)としてキャリアアップを目指すため、思い切ってより好条件の会社に転職するのもひとつの手段です。未経験で転職する際も、経験があって転職する際も、まずは「今以上の会社がないか」をひとつの軸にして考え、応募先を比較・検討していきましょう。

設備管理(ビルメン)の場合、以下に該当する企業に転職すると、年収が上がりやすくなります。

  • ベースとなる年収が高い企業
  • 大手系列系企業
  • 設備管理(ビルメン)の重要性が高い業界
  • 技術革新に積極的な企業
  • 大規模施設の管理に携われる企業
  • 福利厚生が充実している企業

大手企業やグローバル企業ではベースとなる年収が高い傾向にあり、未経験から転職した場合でも他社より条件が良いことが多いです。経験があれば更に優遇してもらえる可能性も高く、転職直後の段階で前職の年収を上回ることもあるでしょう。

また、大企業は福利厚生が整っているケースが多く、基本給はさほど高くなくとも、住宅手当・扶養手当・通勤手当・勤続手当などが付与される場合があります。基本給に「+α」する形で支給されるため、最終的な手取り額を増やせるのが魅力です。

設備管理(ビルメン)の重要性が高い業界に焦点を当てて転職してみるのもよいでしょう。例えば、製造業(メーカーの工場など)、エネルギー・電力、データセンター、医療・福祉などの業界が挙げられます。

これらの業界では、大規模な機材や特殊な設備環境を整えていることが多いです。ハイパフォーマンスで商品を生産できる工場設備、万が一のトラブルが大規模なインフラダウンにつながる恐れのある電力関係、サーバー管理や冷却設備のチェックなど特殊な対策が必要なデータセンターなど、専門知識が必要であればあるほど年収も高くなる傾向にあります。

また、AIやIoTなど最先端技術を積極的に取り入れている企業に狙いを定めて転職し、効率よく働くことを目指してもよいでしょう。IoT・AI・予知保全技術の導入を行っている企業では設備管理(ビルメン)の役割が高度化しており、ツールやソリューションを使いこなせるスキルも求められます。

技術に精通している設備管理(ビルメン)が必要な分、年収も高く、待遇もよくなってることが多いのでチェックしてみましょう。「スキルに見合った給与が支払われるか」も基準に据えて転職先を検討してみると、意外にも良い選択肢が見つかるかもしれません。

設備管理(ビルメン)でキャリアアップを目指すときの心構え

最後に、設備管理(ビルメン)でキャリアアップを目指すときの心構えを紹介します。

設備管理(ビルメン)の場合、最初から爆発的に年収が上がることは稀です。コツコツと知識や経験を積み上げていく必要があるため、長期的なキャリアイメージを抱き、できるところから始めましょう。

まずは基本の業務を徹底的に覚える

設備管理(ビルメン)でキャリアアップを目指すためには、まず基本の業務を徹底的に覚える必要があります。どんな業界でも共通して言えることですが、基礎を固めることがなければ、次のステップに進むことはできません。また、基本的な業務フローや最低限の知識がないまま業務改善策を出すことはできないことを考えると、まずはコツコツと前提スキルを習得していくことがポイントです。

詳細は会社ごとに異なりますが、まずは以下の業務を徹底的に覚えましょう。

定期点検設備の点検を適切に行い、異常がないかをチェックする業務。
保守作業設備が常に最適な状態で動くように、定期的なメンテナンスをする業務。
設備修理設備の故障が発生した際、迅速に対応して修理作業や修理業者の手配をする業務。
設備の更新計画古くなった設備を新しいものに置き換えるための計画を立て、必要な資金や時間を確保する業務。
予算管理設備のメンテナンスや修理、更新にかかるコストを管理し、適切に予算を配分する業務。

基本的な知識があると、その上に積み上げる専門知識や特殊資格なども習得しやすくなります。反対に、基礎がないまま気持ちだけ焦ってハイレベルな業務に挑戦してしまうと、却ってミスやトラブルの原因になるので注意しましょう。学習効率も悪くなり、自分自身のモチベーション低下にもつながります。

継続的な学習と自己啓発を続ける

設備管理(ビルメン)の分野でキャリアアップを目指すためには、継続的な学習と自己啓発も欠かせません。全ての企業が設備管理(ビルメン)に積極的なキャリアアップを推奨しているとは限らないため、目の前の業務だけ淡々とこなすだけになってしまうこともあるでしょう。結果、年齢とともにキャリアアップしていくことが難しくなり、気が付いたときには同年代と大きな差が広がってしまうことも考えられます。

代表的な自己啓発として、以下が挙げられるので参考にしてみましょう。

  • 仕事に役立つ資格を取得する
  • 業界動向の把握と情報収集をする
  • 業界の最新技術を学ぶ

資格の取得は、言わずもがな誰もが思いつきやすい手段です。資格があるとダイレクトにキャリアアップできるケースもある他、確実に実務で活かせるので、取得しておいて損はありません。

また、最新の業界動向や新しい法律・規制を把握しておき、業界の動きに敏感に反応できるよう対策するのもおすすめです。情報を収集し、自分の業務にどのように影響を与えるかを考えることがキャリアアップにつながります。

例えば、業界の専門誌や書籍を読んだり、セミナーや研修に参加したりするのがよいでしょう。実務に役立つ知識やスキルを学べる他、アンテナが高くなるので最新動向や技術を把握しやすくなります。オンラインでもオフラインでも、セミナーのように多数の人が集まる場に参加すれば、コネクションを持つきっかけになるかもしれません。

AIやIoTなど最新技術を学び、スマートメンテナンスや予知保全技術の導入に役立つ知識をコツコツ収集する方法もあります。

同業他社がどのように設備管理(ビルメン)を効率化しているのか、設備管理(ビルメン)に役立つ最新ソリューションが何か、など技術に詳しければ今後社内提案できる可能性も高まるでしょう。最新技術を理解し、実務に応用できるようになることは、キャリアアップにも良い影響を与えます。

チーム間の連携やコミュニケーションを意識する

設備管理(ビルメン)は全ての業務をひとりで完結させることはできない性質上、チームでの協力が欠かせません。設備の状態やトラブルの進捗状況などについて関連部署と情報共有しておくことで、迅速かつ適切な対応が可能になります。逆に、情報共有が不足していると作業の遅延や誤った対応が生じ、全体の業務効率が低下してしまう恐れがあるので注意しましょう。

時には、技術部門、運転部門、外部業者、経営層など、複数の部署と連携することも出てきます。各チームの役割を理解し、協力し合うことで効率よく業務を進められるため、まずは自らが潤滑油的な存在になることを目指すのがポイントです。

なお、チーム間の連携やコミュニケーションを意識し、普段から良好な関係性を築いておくことで、自分の仕事も格段にやりやすくなります。結果、仕事に余裕ができてさらにコミュニケーション面に気を遣えるなど、良いサイクルが出来上がるのもメリットです。

最終的に「誰とでもうまくやっていけてるのであれば所長や統括マネージャーに向いていそうだ」「組織を明るくしてくれる人をリーダーにしたい」など、昇進・昇給のきっかけにつながる可能性も高くなります。

成長意欲とチャレンジ精神をアピールする

キャリアアップを目指すのであれば、普段から成長意欲とチャレンジ精神をアピールしておき、評価される要素を増やすのがおすすめです。

前述した自己啓発についても、積極的に学びの成果を伝えてアドバイスをもらうなど対策しておきましょう。会社が自分に何を求めているかわかれば見当違いの学習になってしまうリスクも予防でき、効率が良くなります。また、新しい技術・知識を積極的に学ぶ姿勢を示すことにもつながるので、印象も良くなります。

同時に、トラブルが発生したときもすぐに対応策を考え、冷静に解決に導く姿勢を示すなどポジティブで明るい姿勢をアピールするのもおすすめです。設備管理(ビルメン)には「最悪のケース」を考えて行動する慎重さも求められますが、周りを勇気づけるような明るさと冷静さがあれば、リーダーとして最適な人材と評価してもらえます。

まとめ

設備管理(ビルメン)の仕事では、知識・技術の向上、専門資格の取得、リーダーシップやマネジメントスキルの習得がキャリアアップにつながります。場合によっては平均年収以上の年収アップも期待できるので、コツコツ系の職種だからと諦めず上を目指してみましょう。

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